心はなぜ苦しむのか (朝日文庫)岸田 秀
朝日新聞社 刊
発売日 1999-09
思うこと 2005-06-12
この本を読んで色々考えました。岸田秀の親子関係でややこしいのは「自分は親のことが嫌いなんだ、と確信した時にはもう親が死んでしまっていた」と言うことでしょうね。
「フロイドを読む」の女の子をバイクで轢いて平然としていた話があって「親の世界が偽者だから、自分は現実感をもてない」と分析していた。要するに孤独な人なんだろう。まわりに人は集まって来て、それなりに楽しく会話したりしても、自分はどこか違う世界にいるような気がするんじゃないかなあ。唯幻論という歴史に残る思想を発表して、作家として成功してはいるけど、かわいそうな人ですよね
だから岸田秀の思想は、みんな過去の歴史事実を引っ張ってきて、そこから論理を組み立てていくというやり方でしょう。歴史も性も時事ネタも全部そうですよね。直感がまずあって、その直感を証明するためにあらゆる言葉をひっぱってきて文章を作るという書き方じゃない。もちろん岸田秀にも直感はあるのだろうけど、やはり他の作家と比べるとその直感力は弱い。岸田秀を読むと「そこまでわかっているのに、どうしてこれだけ?」って思うじゃないですか。それは内容じゃなくて、量のことですけど。
だからはっきり言えば「岸田理論」を完全に理解してしまえば、もう岸田秀の他の本を読む必要はなくなる。今の作家がやらなければならない事は、「岸田理論を理解して、その上で自分の直感で自分の分野を切り開いていくこと」だと思う。事実そうしている作家が素晴らしい作品を書いているような気がする。「唯幻論でしか歴史はわからない」は本当だけど、「岸田秀のやり方でやる」のは間違いだと思います。間違い、という言い方が正しくないとすれば「岸田秀のやり方でやるのは限界がある」しかも、その限界を岸田秀は全てやってしまっていて、後から来た人はこのやり方ではもうやるところがない。岸田秀のファンはまずここでつまづく。まあ、そこのところで突っかかってるのに気付かないでずーっとそのままでいる人も何人かいますけどね。「あのさあ、信じることと狂うことは同じだ、って岸田秀は言ってなかったっけ?」といいたくなります。まあこんなこといったらどうなるか、ってのは目に見えてるから言わないけどサ。
岸田秀と言う人は非常に真面目なんだと思う。人間は絵の具で、ちょっとしたことで混ぜ物が入ってしまう、岸田秀はその混ぜ物が入ることを極度に恐れている。たぶん「そうなったら人間終わり」とすら考えているのではないか。だから怒る時はすごい怒るんでしょうね。人間のいい加減差を愛しながら、いい加減な人間には強い怒りを感じる。そういう風に生きていれば当然傷つく事も多い、若い頃精神病にかかっていまだに完治出来てない理由もそれでしょう
この本の中には明らかに気付いているにもかかわらず、その事を言わなかった部分があると思う。それは「もし親がまだ生きていたらどうしますか」と聞かれて「縁を切って会わないようにする」と言うところです。話はそこで終わっていますが、たぶん言わないでいるその続きは、「でも、もしかしたらそうやって縁を切って、時間がたてば完全には許せないけど、少しは許せるようになるかも知れない。少なくとも『母が嫌い』の一点張りではないと思う。母に『あなたのことが嫌い』とはっきり言って、そこから再び人間関係をやり直すということが、母が死んでしまっているので出来ない。だから自分は『母が嫌い』だけになってしまって、そこから先へ進めないことがとてもつらい」一方的に言うだけ言って、こっちが何か言い返す前に相手が逃げ出してしまうのは「ずるいよ、それ」って思うでしょうね。岸田秀が多産なのは、埋められない穴を何とか埋める方法はないか、という模索が執筆になっているからだと思います。人間関係は要は付き合い方です。それがうまくいかないから、つらいんですよ。
10代、20代の頃は、あまり考えもしなかったのですが、やはり30代になると気になると思います。
インターネットを開いてもついつい検索してしまうという人は多いのではないでしょうか?
私も心はなぜ苦しむのか (朝日文庫) を読んでお勉強しなければと思いました。
私のようなタイプでも、意外とすんなりついていけそうです。
忙しい毎日を送っている人は多いでしょうけれど、空いた時間にでも手にとってみてはいかがでしょうか。
心はなぜ苦しむのか (朝日文庫) の内容は一通り頭に入れておいても損はないはずですよ。
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